鼠径部痛症候群の症状
代表的な症状は、脚の付け根や恥骨周辺に生じる痛みです。

初期には運動後だけに痛みを感じることがありますが、症状が進行すると練習中にも痛みが出るようになります。さらに悪化すると、歩行や階段、起き上がりなどの日常動作でも痛みを感じることがあります。

特に、次のような動作で痛みが出やすくなります。

  • ボールを蹴る
  • ダッシュや急加速をする
  • 急停止や方向転換をする
  • 脚を大きく開く
  • 片脚で踏ん張る
  • 腹筋運動をする
  • 寝返りや起き上がりをする
  • 咳やくしゃみをする

痛む場所は、太ももの内側、恥骨の横、下腹部、股関節の前方などさまざまです。同じ選手でも、複数の場所に痛みを感じることがあります。
鼠径部痛症候群の主な分類
内転筋関連の鼠径部痛
太ももの内側にある内転筋や、その付着部に負担がかかって痛みを生じます。

内転筋周辺を押したときの痛みと、脚を内側へ閉じるように力を入れたときの痛みが特徴です。サッカーのキックや方向転換などで症状が出やすくなります。

腸腰筋関連の鼠径部痛
股関節の前方にある腸腰筋周辺に痛みを生じます。

ももを持ち上げる動作や、股関節を後ろへ伸ばしたときに痛みが出やすく、ダッシュ、キック、階段の上りなどで症状が現れることがあります。

鼠径部関連の痛み
鼠径管と呼ばれる下腹部と脚の付け根の境目付近に痛みを生じます。

一般的な鼠径ヘルニアのような明らかな膨らみがなくても、腹筋に力を入れる、咳やくしゃみをする、起き上がるなどの動作で痛みが強くなることがあります。

「スポーツヘルニア」や「鼠径部障害」と呼ばれることもありますが、用語や病態については統一されていない部分があります。

恥骨関連の鼠径部痛
骨盤の前方にある恥骨結合や、その周辺に痛みを生じます。

恥骨を押したときに痛みがあり、ランニング、キック、片脚での踏み込みなどで症状が強くなることがあります。

股関節関連の鼠径部痛
股関節インピンジメント症候群や股関節唇損傷など、股関節内部の問題によって鼠径部に痛みを感じることがあります。

深くしゃがむ、股関節を曲げてひねる、車から乗り降りするなどの動作で痛みや詰まり感が出る場合は、股関節の評価も必要です。

これらの分類は、痛む場所だけで決まるものではありません。問診、圧痛、筋力テスト、股関節の動きなどを組み合わせて判断します。
鼠径部痛症候群の原因
鼠径部痛症候群は、股関節周辺に繰り返し大きな負荷が加わることで発症します。

特にサッカーでは、キック、ダッシュ、切り返し、スライディングなどによって、内転筋、腹筋、腸腰筋、股関節周辺に強い負荷がかかります。

発症に関係する要因として、次のようなものが考えられます。

  • 練習量やキック数の急激な増加
  • 内転筋の筋力不足
  • 過去の鼠径部痛や内転筋損傷
  • 股関節の可動域低下
  • 体幹や骨盤の安定性低下
  • 臀部や下半身の筋力不足
  • 片脚動作での身体のぐらつき
  • キックや方向転換フォームの問題
  • 痛みを我慢したままの競技継続

ただし、単純に「身体が硬い」「骨盤がずれている」など、一つの問題だけが原因とは限りません。

競技量、筋力、股関節の状態、過去のケガ、競技動作などを総合的に評価することが大切です。
検査と評価
鼠径部痛症候群の評価では、最初に痛む場所や症状が出る動作、競技量、発症までの経過を確認します。

そのうえで、次のような項目を評価します。

  • 内転筋や腸腰筋、恥骨周辺の圧痛
  • 脚を閉じる方向へ力を入れた際の痛み
  • 股関節を曲げる筋力と痛み
  • 腹筋に力を入れた際の痛み
  • 股関節の可動域
  • 内転筋、臀筋、体幹の筋力
  • 片脚スクワットやジャンプ動作
  • ランニング、方向転換、キック動作

症状によっては、整形外科でレントゲン、MRI、エコーなどの検査を行います。

鼠径部の痛みには、股関節唇損傷、疲労骨折、鼠径ヘルニア、神経障害などが隠れていることもあります。画像だけで判断するのではなく、症状や身体所見と合わせて原因を確認することが必要です。

急激な強い痛み、歩けないほどの痛み、安静時や夜間にも続く痛み、発熱、鼠径部の明らかな膨らみ、陰部の痛みなどがある場合は、早めに医療機関を受診してください。
鼠径部痛症候群の治療とリハビリ
痛みが強い時期は、キック、全力ダッシュ、方向転換など、症状を悪化させる動作を一時的に減らします。

ただし、長期間完全に休むだけでは、競技再開後に痛みが再発することがあります。痛みの状態を確認しながら、股関節周辺に段階的に負荷をかけていくことが重要です。

慢性化した内転筋関連の鼠径部痛では、受け身の治療だけでなく、内転筋や体幹を強化する運動療法の有効性が報告されています。
内転筋のトレーニング
最初は、ボールやクッションを膝で挟むなど、関節を大きく動かさずに力を入れる運動から始めます。

痛みが落ち着いてきたら、横向きでの内転運動や立位でのトレーニングなどへ進みます。さらに競技復帰が近づいた段階では、コペンハーゲンアダクションなど、より大きな負荷に耐えるトレーニングを行います。

コペンハーゲンアダクションは内転筋力の向上に有効ですが、負荷が強いため、痛みが強い時期から無理に行うものではありません。段階的に導入する必要があります。内転筋強化を含むプログラムは、サッカー選手の鼠径部トラブルを減らしたという研究もあります。
股関節と体幹の機能改善
キックや方向転換では、内転筋だけでなく、臀筋、腹筋、股関節周辺の筋肉が協調して働きます。

内転筋だけに負担が集中しないように、臀筋、腸腰筋、腹筋、体幹などもトレーニングします。

股関節の動きに制限がある場合は、必要な可動域を改善します。ただし、無理なストレッチによって痛みが増す場合もあるため、症状に合わせた調整が必要です。
ランニングと競技動作の再獲得
筋力が改善したら、ジョギング、加速、減速、方向転換の順に運動強度を上げていきます。

サッカー選手では、短い距離のパスから始め、ロングキック、シュート、対人練習へと段階的に進めます。

痛みが少ないからといって、すぐに全力キックやゲーム形式へ戻すと再発する可能性があります。
スポーツ復帰について
スポーツ復帰は、安静時の痛みがなくなったことだけで判断しません。

次のような項目を確認しながら復帰を進めます。

  • 鼠径部を押しても強い痛みがない
  • 脚を閉じる方向に力を入れても痛みがない
  • 内転筋の筋力が回復している
  • 全力に近いダッシュができる
  • 急停止や方向転換ができる
  • キックや競技動作を繰り返しても症状が悪化しない
  • 翌日に痛みが強く残らない

急性の内転筋損傷では、痛みのない状態や競技動作の達成基準を確認して復帰した選手の方が、再発が少なかったと報告されています。
プラストレーナーズでの鼠径部痛に対するアプローチ
プラストレーナーズでは、痛みが出ている鼠径部だけでなく、股関節、骨盤、体幹、臀部、下肢全体の状態を評価します。

スポーツ選手には、ランニング、片脚動作、方向転換、キックなども確認し、鼠径部に負担が集中している原因を探します。

症状や競技レベルに合わせて、

  • 鼠径部周辺のコンディショニング
  • 内転筋の段階的な筋力トレーニング
  • 股関節の可動域改善
  • 臀筋や体幹の機能改善
  • ランニングや方向転換動作の改善
  • キック動作の確認
  • 段階的な競技復帰
  • 再発予防のトレーニング

まで一貫してサポートします。

鼠径部痛は、休むと一時的に改善しても、競技を再開すると再発しやすい障害です。痛みを繰り返している方や、長期間競技に復帰できていない方は、お気軽にご相談ください。