疲労骨折とは
骨は硬い組織ですが、運動によって受けた小さな損傷を修復しながら、負荷に適応しています。しかし、練習によって骨が受けるダメージが、身体の修復能力を上回る状態が続くと、骨の内部に小さな損傷が蓄積します。その状態が進行し、骨にひびが入ったものが疲労骨折です。
近年では、骨に明確な骨折線が確認される前の段階も含めて、骨ストレス障害(Bone Stress Injury:BSI)という連続した病態として考えられています。
早い段階で発見し、適切に負荷を調整できれば重症化を防げる可能性があります。一方で、痛みを我慢して練習を続けると、治療期間の長期化や完全骨折につながることがあります。
疲労骨折に多い症状
疲労骨折では、「転んだ」「ぶつけた」といった明確なきっかけがないまま、徐々に痛みが強くなることが多くあります。- 走る、跳ぶ、投げると特定の場所が痛む
- 骨の上を押すと、狭い範囲に強い痛みがある
- 練習後や翌日に痛みが強くなる
- 休むと軽くなるが、練習を再開すると再発する
- 片脚ジャンプや着地で痛む
- 腫れや熱感がある
- 症状が進むと歩行や日常生活でも痛む
- 安静時や夜間にも痛みを感じる
特に、骨の一点に痛みが集中している場合は注意が必要です。
すねの痛みをシンスプリントだと思って練習を続けているケースもありますが、限局した強い痛みが続く場合は、疲労骨折との鑑別が必要です。
疲労骨折が疑われる場合は、自己判断でトレーニングを続けず、まず整形外科を受診してください。
疲労骨折が起こりやすい部位とスポーツ
疲労骨折は、競技で繰り返される動作によって発生しやすい部位が異なります。陸上競技・マラソン
ランニングでは、着地による衝撃が下肢へ繰り返し加わります。起こりやすい部位は、
- 脛骨
- 腓骨
- 第2・第3中足骨
- 足舟状骨
- 大腿骨
- 骨盤・恥骨
などです。
走行距離だけでなく、スピード練習、坂道、スパイク、硬い路面などへの急な変更にも注意が必要です。
サッカー・フットサル
サッカーでは、長い走行距離に加えて、ダッシュ、急停止、切り返し、キックが繰り返されます。特に、
- 第5中足骨
- 脛骨
- 中足骨
- 腓骨
- 骨盤周辺
などに疲労骨折が起こることがあります。
足の外側に痛みが出る第5中足骨疲労骨折(ジョーンズ骨折)は、治癒に時間がかかる場合があるため、自己判断による競技復帰は避ける必要があります。
バスケットボール・バレーボール・ハンドボール
ジャンプ、着地、ダッシュ、切り返しを繰り返す競技では、- 脛骨
- 腓骨
- 中足骨
- 足舟状骨
- 膝蓋骨
- 骨盤周辺
などに負担が集中します。
「着地するとすねが痛い」「足の甲が痛い」「片脚で踏み切れない」といった症状を、単なる筋肉痛として放置しないことが重要です。
野球・投球競技
野球では、下肢だけでなく、繰り返される投球やスイングによって上半身にも疲労骨折が起こります。- 肘頭
- 尺骨
- 上腕骨
- 肋骨
- 腰椎
などが代表的です。
投球選手の疲労骨折では、患部だけでなく、肩関節、肩甲骨、胸郭、体幹、股関節を含めた全身の連動性を確認する必要があります。
体操・フィギュアスケート・ダンス
身体を反らす、ひねる、ジャンプから着地するといった動作を繰り返す競技では、- 腰椎
- 脛骨
- 中足骨
- 足舟状骨
- 骨盤周辺
などの骨ストレス障害が起こることがあります。
成長期に起こる腰椎分離症も、腰椎に繰り返し負荷が加わって発生する骨ストレス障害の一つです。
疲労骨折が起こる原因
疲労骨折は、単純な「練習のしすぎ」だけで起こるものではありません。- 練習量や強度の急激な増加
- 走行距離を急に増やした
- ジャンプやスプリント練習が増えた
- 合宿や連戦が続いた
- 休養後、すぐに元の練習へ戻った
- 学年やカテゴリーが上がり練習量が増えた
- 新しいシューズやスパイクへ変更した
心肺機能や筋肉が動ける状態でも、骨が新しい負荷に適応できているとは限りません。
- 筋力や身体機能の問題
- 股関節や足関節の可動域不足
- 臀部やふくらはぎの筋力不足
- 左右差
- 片脚での安定性不足
- 着地や減速動作の未熟さ
- 疲労時のフォームの崩れ
- 特定の部位に負担が集中する動作
こうした問題があると、同じ練習量でも一部の骨へ負担が偏ることがあります。
- シューズや練習環境
- 摩耗したシューズ
- 足や競技に合っていないシューズ
- 硬い路面での練習
- 人工芝への変更
- 同じ方向への周回練習
- 練習場所の急な変更
日本整形外科スポーツ医学会も、練習量の急増、選手の体力や技術に合わない練習、シューズ、練習場所などを疲労骨折の要因として挙げています。
- エネルギー・栄養不足
運動量に対して食事量が不足すると、骨の修復や形成に必要なエネルギーまで足りなくなることがあります。
- 食事量が練習量に追いついていない
- 体重や体脂肪を急激に減らしている
- 練習後に十分な食事を取れていない
- 月経周期に変化がある
- 疲れやすくなった
- ケガや体調不良を繰り返す
- パフォーマンスが低下している
このような場合には、スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)も考慮し、医師や管理栄養士などと連携する必要があります。エネルギー不足は、男女ともに骨ストレス障害の重要な要因です。
疲労骨折に対するLIPUS治療
LIPUSとは、Low Intensity Pulsed Ultrasoundの略で、日本語では低出力パルス超音波と呼ばれます。骨折部位の皮膚上に専用の超音波機器を当て、身体への負担が少ない超音波を照射することで、骨癒合を促すことを目的とした治療です。一般的には、1日20分程度の照射を継続して行います。
LIPUSの特徴
- 皮膚を切らずに行える
- 治療中の痛みをほとんど感じない
- 骨折部位へ直接照射できる
- 装具を使用している期間にも実施しやすい
- 患部外トレーニングと並行して行える
プラストレーナーズでは、医療機関で確認された骨折部位に対してLIPUSを使用します。
ただし、疲労骨折に対するLIPUSの研究結果は一定しておらず、すべての疲労骨折で治癒期間や競技復帰までの期間を短縮できるとは断言できません。2023年のシステマティックレビューでも、研究方法や対象が異なるため、明確な結論を出すには追加研究が必要とされています。また、下肢の骨ストレス障害を対象とした無作為化比較試験では、有効性が確認されなかったとの報告もあります。
そのため、プラストレーナーズではLIPUSだけで疲労骨折を治そうとするのではなく、
- 医師の診断と治療方針
- 患部への負荷制限
- 患部外トレーニング
- 筋力・可動域の改善
- 栄養・休養の確認
- 段階的な競技復帰
を組み合わせて進めます。
疲労骨折の治療
疲労骨折では、骨折した部位と重症度に応じて治療方法が異なります。基本的には、原因となっているランニング、ジャンプ、投球などを一時的に制限し、骨が回復できる環境を作ります。
歩行でも痛みがある場合は、松葉杖や装具を使用して荷重を制限することがあります。骨折の部位や状態によっては、手術が必要になるケースもあります。
特に、
- 大腿骨頚部
- 脛骨前方
- 足舟状骨
- 第5中足骨基部
などは、治癒の遅延や完全骨折に注意が必要な高リスク部位です。痛みが軽くても、医師の管理下で慎重に復帰を進める必要があります。
休養中の患部外トレーニング
疲労骨折と診断されたからといって、必ずしもすべての運動を中止する必要があるとは限りません。主治医から許可された範囲で、
- 上半身や体幹の筋力トレーニング
- 患部に負担をかけない下半身トレーニング
- 反対側の脚の筋力強化
- エアロバイク
- 水中運動
- 呼吸循環機能を維持する運動
- 股関節や足関節の可動域改善
などを行い、競技を休んでいる期間の体力低下をできるだけ抑えます。
何ができるかは疲労骨折の部位や治療方針によって異なるため、医師の指示を確認してプログラムを組みます。
スポーツ復帰までのリハビリ
疲労骨折は、痛みがなくなった直後に元の練習へ戻すと、再発する可能性があります。1.日常生活での痛みを確認する
まず、歩行や階段などの日常生活で痛みがないことを確認します。高リスク部位や重症例では、症状だけでなく、画像検査による骨癒合の確認が必要になることがあります。
2.筋力と可動域を回復する
休養期間中に低下した、- 股関節周囲の筋力
- ふくらはぎの筋力
- 足部・足趾の機能
- 体幹の安定性
- 足関節の可動域
- 片脚で身体を支える能力
などを確認し、段階的に回復させます。
3.骨に負荷を戻す
医師の許可と症状を確認しながら、- 両脚での荷重
- 片脚での荷重
- カーフレイズ
- 軽いジャンプ
- 片脚ホップ
- ジョギング
- 加速・減速
- 切り返し
- 競技練習
へと進めます。
4.ランニングを段階的に再開する
最初から距離とスピードを同時に戻すのではなく、- 走る時間
- 走行距離
- 練習頻度
- 連続して走る時間
- スピード
- 坂道や切り返し
- 競技練習
を一つずつ増やします。
練習中の痛みだけでなく、練習後や翌日の痛み、腫れ、疲労感も確認します。
5.競技特有の動作へ戻す
競技によって必要となる負荷は異なります。陸上・マラソン
連続走
スピード走
坂道
スパイク
レースペース
サッカー・バスケットボール
ダッシュ
急停止
切り返し
片脚ジャンプ
コンタクト
実戦形式
野球
段階的なスローイング
バッティング
ベースランニング
守備動作
投球数と強度の管理
体操・フィギュア・ダンス
両脚着地
片脚着地
回転を伴うジャンプ
連続ジャンプ
実際の演技やプログラム
へと段階的に進めます。
プラストレーナーズでの取り組み
1.LIPUSによる治療
医療機関で確認された疲労骨折部位に対し、低出力パルス超音波を照射します。主治医から指示された荷重制限や運動制限を守りながら実施します。
2.患部外トレーニング
患部を休ませている期間も、許可された範囲で体幹、上半身、反対側の脚などをトレーニングし、競技復帰時の体力低下を抑えます。3.疲労骨折につながった要因の評価
- 発症前の練習量
- 筋力や可動域
- 左右差
- 片脚バランス
- ランニングや着地動作
- シューズや練習環境
- 食事や体重の変化
- 休養や睡眠
などを確認します。
4.段階的な競技復帰
痛みがなくなることだけをゴールにせず、ランニング、ジャンプ、切り返し、投球など、競技に必要な負荷へ段階的に戻します。5.再発予防
疲労骨折を起こす前と同じ練習へそのまま戻すのではなく、身体の反応を確認しながら練習量と強度を調整します。このような方はご相談ください
- 疲労骨折と診断され、LIPUS治療を受けたい
- 競技を休んでいる間の体力低下を防ぎたい
- 病院から運動再開の許可が出たが、何から始めればよいか分からない
- ランニングを再開すると同じ場所が痛くなる
- 復帰後のジャンプや切り返しに不安がある
- 疲労骨折を繰り返している
- 患部以外の筋力や身体機能も改善したい
- 元の競技レベルまで段階的に戻したい
LIPUSで骨の回復をサポートしながら、休養中の体力低下を防ぎ、再び走る・跳ぶ・投げるために必要な身体機能まで段階的に取り戻します。


