肩関節脱臼は日常生活ではほとんど起こりませんが、ラグビーやハンドボールなどのコンタクトスポーツでは珍しくないケガです。
また野球でもヘッドスライディングやダイビングキャッチなどで起こりますし、体育でのバレーボールのスパイクで脱臼したり遊びでボールを投げていて脱臼したという例もあります。
肩関節は、肩甲骨の関節面と上腕骨の骨頭で構成されており、関節唇や関節包、関節包靭帯といった周辺組織で安定性が高められています。さらにその外側にインナーマッスルと呼ばれる回旋筋群(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)があり、動的な安定性を保っています。
肩甲骨関節面と上腕骨骨頭のイメージは、ゴルフのティーアップのイメージです。肩甲骨の関節面がティーで、上腕骨の骨頭がボールです。かなり不安定なイメージですよね。このままでは安定性に乏しいので先ほどの周辺組織により覆われ安定性を保っているのです。
脱臼とはどんな状態か
この肩関節が脱臼するということは、肩甲骨関節面と上腕骨骨頭の位置が何らかの衝撃によりズレてしまい、ティーからボールが落ちてしまった状態です。落ちかけてすぐに戻った状態は亜脱臼と言われます。
肩関節が肩甲骨関節面と上腕骨骨頭だけで構成されているのであれば、外れた関節は戻せばいいのですが、実際は先ほど書いたように多くの周辺組織に囲まれているため、肩関節が脱臼するということはその周辺組織を引きちぎってしまっているということになります。
ですので外れた関節は整復して戻せても、引きちぎられた周辺組織が治るわけではありません。亜脱臼でも同じです。
肩関節脱臼のリハビリ
関節としては整復すれば元通りの位置に戻りますので、脱臼後のリハビリは壊れた周辺組織によるアプローチとなります。
リハビリの前に肩関節専門医の診断を受けましょう。MRIやCT検査により骨折や組織損傷の部位や程度を把握することでリハビリの方針が変わります。骨折等の損傷が激しい場合や反復性脱臼の場合は手術が必要になることもあります。
保存療法としてまず必要になることは、肩関節の固定です。
破れた(伸びた)関節包や関節包靭帯は肩関節の安定性を担っていた大切な組織ですので、その働きを再獲得するために肩関節を固定し組織の修復を図ります。この固定が十分でないと、肩関節に安定性が戻らず再脱臼しやすい関節になってしまいます。
2~3週間程度の固定後、可動域訓練を開始します。
再脱臼しないよう運動方向に配慮しながら、固定により狭くなっている可動域を戻していきます。状態にもよりますが1~2週間程度必要になります。
これに並行して、肩甲骨や胸郭の可動性を改善することで再脱臼予防を図ることも大切です。肩関節は肩甲骨と上腕骨による関節ですので、肩甲骨の動きが十分でないと肩関節に大きな負担が掛かるになります。
ある程度の関節可動域が得られたらインナーマッスルやその他周辺筋群の筋力強化を行い、スポーツ復帰へ向けて強度を上げていくことになります。
競技復帰まで
十分は可動域と筋力が戻ったら競技練習を再開します。
まずは1人で行うシンプルな動作から始めて、コンタクトプレーは避けるようにしましょう。
コンタクトプレーの開始は医師やトレーナーと相談し、肩関節機能をチェックして問題ない状態となってから行うようにしましょう。
このように肩関節脱臼は単純に「外れた関節がハマればオーケー」というわけではありません。
正しくリハビリを行いスムーズに競技復帰できるように、また再発しないようにしていきましょう。
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伊藤孝信
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